2015年6月5日金曜日

移動平均の読み方(5): 移動平均の組み合わせ

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「移動平均の読み方」シリーズ第5回(最終回)は、複数の移動平均の組み合わせについてです。

どうして移動平均を組み合わせるのか

移動平均線には、有名なゴールデンクロスとデッドクロスだけでなく、これまで解説した水平ラインブレイクトレンドライン&パターンなどの売買サインがあり、単体でトレードすることもできます。

ではどうして、複数の移動平均を使うのでしょうか?

一本の移動平均から分かることは、極端に言えば「上昇なのか下降なのか」の2択です。しかし、相場には「上げ相場の中で一時的に下げ調整している」や「下げ相場の中の持ち合いで下に抜けそう」など、もう少し事情の込み入った局面があります。

動平均を組み合わせると、相場に現れているトレンドを複数の視点から分析できるようになり、相場の局面をより詳細に判定できるようになります。

局面判断の重要性

遅行スパンの記事でも述べましたが、相場の局面を判断できることは非常に重要です。局面さえ分かれば、上がるなら買って、下がるなら売ればいいだけなのです。遅行スパンにしろ、今回解説する3本移動平均にしろ、決して完璧ではありませんが、局面判断に役立つのは間違いありません。

局面が分かるようになれば、テクニカル指標が出す売買サインの精度や値幅を見積もることができます。すると、損切りや利食いのラインやポジションサイズを適切に設定できるようになります。損小利大への大きな一歩となるのです。

3本を使って相場の局面を判定

移動平均線の組み合わせは、2本(長期、短期)もしくは3本(長期、中期、短期)が一般的です。今回は3本を使ってみます。

局面を判断するのに大事なのは、長期の移動平均の向きと3本の並び方です。

まず、長期の移動平均の向きで大局のトレンドを判断します。その上で、3本の並びがどのようになっているのかを見て、細かな判断を下します。

基本は上昇トレンドなら上から短期・中期・長期の順、下落トレンドならその逆です(パーフェクトオーダー)。この並びが頻繁に崩れて入れ替わるような相場は、先の読みづらい展開となります。

長期が上向き: 上昇トレンド
1. 短期・中期・長期の順で3本とも上向き: 上昇局面
2. 短期が中期に接近: 調整局面(小)
3. 中期・短期の順になり、長期に接近: 調整局面(大)
4. 中期・短期が下にくる: 過渡局面
長期が下向き: 下降トレンド
1. 長期・中期・短期の順で3本とも下向き: 下落局面
2. 短期が中期に接近: 調整局面(小)
3. 短期・中期の順になり、長期に接近: 調整局面(大)
4. 中期・短期が上にくる: 過渡局面
長期が横向き: レンジ

並びと間隔に注目してトレンドを捉える

移動平均線はトレンド向きのテクニカル指標です。3本組み合わせてもこの性質は変わりません。短期・中期・長期が順に並んだトレンド局面を捉えることができるのが、最大の強みです。

特に、長い時間軸でこの形が現れたときは大チャンス。週足で強力なトレンドが出ているのに、自分がエントリーしたところでピッタリ反転する可能性なんてほとんどないのです!

SMA(5 赤)、SMA(21 黄)、SMA(50 青)の3本を使って、実際のチャート(ユーロドル週足)を見てみましょう。


下落、レンジ、緩やかな上昇、急激な下落、という流れです。チャート左端は1.5から1.2にかけての大きな下落トレンドの終盤です。

短期・中期・長期の順にならんだトレンド局面は3か所あります。

1つ目と3つ目は大きな下落と、調整の反発という形で綺麗に分かれています。注目するのは、下落前は狭まっていた短期・中期の移動平均の間隔が、一気に拡大していることです。この広がり方を見ることで、トレンドの勢いを測ることができます。

2つ目は細かい調整を入れつつも堅調に上昇しています。1本や2本の移動平均では、調整局面に入った時に、それがトレンドの勢いを失わない程度なのかどうかの判定が難しいです。一方、3本使っていれば安心して押し目を拾えます。

第一回で述べた「移動平均は参加者の平均コスト」という観点から解釈すれば、短期勢の利食いや逆張りで軽く落ちるものの、中期勢から見ればまだまだ買い目線の相場である、ということになります。

レンジ相場でも並びに注目、ブレイク方向を教えてくれることも

レンジ相場でも3本の位置関係に注意を払っていれば、ブレイクの方向を予想するのに役立ちます。


枠で囲った部分では、短期の移動平均は中期を下回るものの、長期の移動平均を下抜くほどの力がありません。一方長期の移動平均は、横方向から徐々に上へ首を持ち上げつつあります。

最後の力で下抜けを試みるものの、並びを崩すことに失敗しています。この直後の水平ラインブレイクはチャンス。失望したベア派の損切りで、レンジブレイクに至る可能性が高まったからです。

最適な組み合わせは?

移動平均の期間の組み合わせには、いろいろなものがあります。今回用いた(5、21、50)の組み合わせもよく使われるものの一つです。

5日は一週間の平日の日数と同じなので、5日移動平均は「過去1週間に作られたポジションの平均コスト」とみなすことができます。同様に、1か月に取引日が約21日あるので、21日移動平均は1か月の平均コストです。

どのような期間を用いるべきか、どのタイプの移動平均がいいのか、というのは多くの人が悩むところです。しかし結論から言えば、「好きなものを使えばいい」ということになります。

というのも、どの市場にも通じる最適な移動平均というものは存在しないからです。

何をもって最適というのか

テクニカル分析の教科書として有名な「先物市場のテクニカル分析」には、様々な市場で移動平均の最適期間を調べた結果が載っています。それによると、銀なら19日、大豆油なら69日、など市場によって結果はバラバラです。

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本気で最適期間を求めるなら、市場にあった期間を調べなければ意味がないのです。

また、最適かどうかを判断する基準も不明確です。ゴールデンクロスとデッドクロスで売買した結果を調べるのが一般的だと思いますが、水平ラインブレイクやトレンドラインなど、移動平均を使ったテクニックは他にもあります。

「先物市場のテクニカル分析」に載っている結果は、こうしたことを考慮していないため、指数平均より単純平均の方が優れている、3本より2本の方がいい、など疑問のある結論となっています。

期間が多少違っても、移動平均の形に大差はありません。SMAとEMAの違いも、明確に優劣をつけられるものではありません。大事なのは、自分の使う組み合わせに熟練することなのです。

まとめ

ほとんどの人が一番最初に学ぶテクニカル指標が移動平均だと思います。移動平均線より上なら買い、下なら売り。実に単純なルールです。もう移動平均はマスターした、と考えて他のテクニカル指標に目移りしてしまうこともうなずけます。

しかし、多くの書籍やWebサイトでの扱われ方とは裏腹に、移動平均は深く研究する価値のあるテクニカル指標です。よく理解すれば、MACDなど他の移動平均線を利用した他のテクニカル指標への理解も深まります。相場の捉え方も違ってくるでしょう。

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多くのプロトレーダーが、移動平均だけを表示したチャートを使ってトレードしています。相場を極めた結果、最後に戻ってくるのが移動平均ということなのでしょう。他のテクニカル指標に頼っているうちは、まだまだ青いのかもしれません。

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